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【少年サッカー】親の口出しがコーチから問題視される理由【ティーチングとコーチングの違い】

親の話を聞かない子ども

どうも!
JFA公認コーチとして少年サッカーチームで活動しているkoyoです!

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少年サッカーで顕著に見られるのが「親の口出し」ですが、それが「何故だめなのか?」と思っている保護者の方は多いと思います。
実際、“お父さんコーチ”がご活躍されて結果を残しているチームもあるわけですが、親の口出しがどのような影響を与えるかわからずにとりあえず子どもに自分の気づいたことを言ってしまっている方もいるかと思います。

「親の口出し」については色々な角度からの意見があるかと思いますが、この記事ではチームを率いる指導者の視点から解説させていただきます。ただし、一方的に親の口出しを否定するものではありません。親には親にしかできない役割、指導者には指導者にしかできない役割がそれぞれ日本の少年サッカーという育成環境にはあり、それをはっきりさせようというのがこの記事の目的です。

ですが、実際には親の口出しによって上手く成長できなくなってしまう子どもも多いのが事実です。なので、まずは親が口出ししてはいけない理由を解説します。

親の口出しはコーチングではなく、ティーチングだからダメ

ティーチングとコーチング

「親はサッカーの知識がないから」という理由で親の口出しはダメだと考えている指導者は多いです。しかし、それでは「サッカーの経験がある親はOK」という扱いになってもおかしくありません。事実、サッカーを自分がやっていたからという理由でベンチに座っているわけでもない親が子どもに具体的な指示を出しているシーンは現場でもよく見てきました。見た目が明らかに保護者なのに試合中の子どもに声掛けをしていたりとかですね。

もし、親がその役割をこなせるならそのチームにとって指導者は不要と言えるでしょう。

親の視点に立てば、子どもに何か言いたくなる気持ちはわかります。しかし、だいたいの親の声掛けはコーチングの部類に入りませんティーチングになっているから親の“声掛け”ではなく「口出し」という表現を使うくらい指導者から問題視されるのです。またコーチングになっていれば親の声掛けはOKなのか?というとそうでもありません。

今からその理由をコーチングとティーチングの違いに基づきながら説明していきます。

コーチングとティーチングの違い

コーチングは答えを「引き出す」

ティーチングは答えを「教える」

サッカーの指導において「ティーチング」を行っていいのは最初の基礎スキル習得の段階の時や新しい取り組みを始めたときの初期段階などだけです。つまり、子どもが知らない動作を教える時だけです。例えば、インサイドパスやインステップキックなどがわかりやすいでしょう。インサイドキックを教える際は「軸足を蹴りたい方に向けて、脇を閉めて膝下から素早く振る」といった動作を最初に教える必要がありますが、それ以上はその選手にあった蹴り方・工夫が必要になります。このようにノウハウそのものを教えることをティーチングと言います。

対してコーチングはその人の中にある「答えを引き出す」ことです。例えば、3対1の鳥かごをしているときに、鬼がいる方にパスを出してしまった選手に対して、「逆の選手の方が鬼から遠いでしょ!」というのはティーチングです。これをコーチングにするなら「今鬼がどっちにいたか見えてた?」と聞きます。そうすれば、その選手から何かしらの返答があるはずです。

①「見えてた」
②「見てなかった」

このどちらかだと思います。①の場合は、「見えてたら別の選択肢もあったよね!」と言えばOKです。②の場合は、「見えてないとボール取られちゃうよね。どうすれば鬼の位置を確認できる?」とボールを受ける前に首を振って鬼から遠い選手にパスを出すという答えを引き出します。

子どもに言語化してもらうことが重要

サッカーの監督と子ども

サッカーのプレーを言語化するのは難しいです。つい大人が教えてしまいたくなりますが、自分の言葉で声に出したことと、聞いただけのこととではその選手に入る情報量が大きく異なります

こんな話を聞いたことはありますか?
『自分の声で出せない言葉は聞き取ることができない』

これは英語などの外国語を学ぶ際に私が聞いた言葉です。外国語の授業ではリスニングという分野が入ってきます。CDや先生の話した言葉を聴き取って問題に答えるものです。リスニングでは聴き取るものですが、聴き取るためにはその単語1つ1つを自分が話せる必要があります。自分が言語と認識して使用できるものしか言語として耳に入ってこないのです。つまり、知らない言葉はただの雑音にしか聞こえなく、話せないし、聴き取れないのです。

これはサッカーにも言えて、自分でとあるプレーを言葉で表現できれば、そのプレーに関する理解度が高いと言えます。ただ何となくできてしまっているのではなく、頭で理解してそのプレーを実行しているという経験は子どもにとって非常に重要なものです。

その言語化という作業ですが、ティーチングでは言語化はできません。ただ、教えられたことを実行するだけなので、その技術は自分のモノにはなりません。対してコーチングは指導者の問いかけに対して自ら答えを出すので、その時点で言語化ができています。この違いはとても大きいです。

親の口出しは選手の混乱を招く

道に迷う子ども

特にありがちで危険なのが、試合を応援している保護者が選手に色々と指示を出してしまうことです。応援したい気持ちがあるのはとても良いことですが、応援が指示に変わってしまったらそれは選手にとってマイナスでしかありません。

というのも、サッカーはチームスポーツです。

少年サッカーでは8人制で、8人それぞれに役割が与えられていますし、チームとしてやりたい戦術や目的があります。それを理解することなく選手に指示を出す行為はもはや危険行為と言っても過言ではないでしょう。

これもティーチングとコーチングの話になりますが、自分の子どもがゴール前でボールを持ったとき、「シュートを打て!!!」と言いたくなりますよね。その気持ちは重々承知しています。しかし、そのすぐ横にフリーの味方がいたらその選手はパスを選択するべきです。その方がゴールの確率はたかいですから当然の判断と言えるでしょう。しかし、そのゴール前での刹那に「シュート!!」の声が聞こえると、人間の判断は鈍くなるものです。普段ならゴールの確率が高くなるパスを選択する選手も、一瞬迷います。「自分でゴールできるんじゃないか?」と。この迷いがサッカーのワンシーンにとっては致命的です。一瞬迷うだけで、サッカーのプレーはミスの確率がグンと高くなります。だからこそ、その迷いを作ってしまう要因はなくさなければなりません。

ポジティブな言葉で応援しよう!

サポーターの群衆

選手にとっては親からのポジティブな言葉が一番の支えになります!

特に小学生年代なんかは親の声が一番よく聞こえるものです。サッカー場という雑音が多く聞こえるフィールドで集中してプレーしていても、自分の親の声だけが鮮明に聞こえるという瞬間は誰しもあると思います。

それほどよく聞こえる声がネガティブな言葉ばかりだった嫌になりますよね?

子どもにとって一番通りやすい声だからこそ、プラスに働く声を意識しましょう!

それが具体的な指示である必要はありません。
「ナイスプレー!」「グッド!」という抽象的な言葉で選手を称えるもので十分です。

試合が終わった後も良いプレーを評価してあげましょう。
良いプレーを大人が評価してあげることで子どもは自信がつくので、その先も良いプレーができるようになります。

子どもにとって親という存在は「安心感を与えられる存在」です。

もちろんコーチ陣も子どもに安心感を持ってプレーできる環境を用意しなくてはなりませんが、試合の重要度が上がれば上がるほど緊張感は増していきます。そんな時に自分の親からも高圧的な言葉や指示を言われると、本当にメンタルの強い子ども以外は良いプレーができなくなってしまいます。なので、子どもたちにはポジティブな言葉で“応援”するのがベストな子どもとの関わり方だと思います!

ここまで読んで頂きありがとうございました!

writer koyo